150810「用意、はじめ」、小テストの始まる合図です。
この言葉を聞くと、空手の型の練習を思い出します。おそらく空手を習っている、習った事があるという人は多いと思いますが、私もその一人です。
空手には、想定型というものがあります。想定とは予想した範囲のことです。どの型も自然体から始まり、「用意、はじめ」の合図で、四方八方から迫りくる敵を想定して縦横無尽に立ち回り、最後は開始位置に戻って自然体で終わります。
自然体というのは、力を抜き肩幅で足を開いた状態の立ち姿勢ですが、いわゆる基本姿勢のことです。伝統の型は、技だけでなく、エネルギーの出し方、使い方、その姿勢までを教えくれます。

この想定型、実際は目の前にいない相手(敵)を想像して、型を繰り出していくのですが、このイメージがないままにやってもあまり意味はありません。こちらから攻めてきたら、このようにかわす。あちらから攻めてきたら、このように攻め返すなど、考え尽くされた最短・最善・最速の方法です。
イメージがあってこそ、力の入れ具合やスピード、動きの順序などにつながります。この基本が身につくことで、姿勢が正され、筋力がつき、初めていくつもの技の組み合わせや長時間の練習にも耐えうるような土台ができます。

しかしながら、実戦は想定内のことばかりではありません。自分の想定したスピードより早い蹴りが飛んでくることもあります。
想定型では、右からだったのに、左から突きが出てくることもあります。余談ですが、武道の奥儀(極意・深く大切な事)で、全く左右逆の型を行う鍛錬があります。左右真逆で型を行います。実際に試すととても難しいです。
元に戻りますが、実戦に備えて、想定した型以外の方向も練習していく必要があるということです。想定外に備えるわけです。これは聞いた話なのですが、自衛隊での訓練で、目的地までたどり着く任務を果たす時の話。地図を渡されて、目的地を目指すのですが、地図に描かれている橋を渡る計画を立てたところ、その地点に行ってみると、橋が壊れていました。
アクシデントが起こり、寝る予定の時刻には寝れずに、翌日の訓練に突入することになりました。想定外の出来事です。想定外が用意されている訓練ばかりだそうです。

勉強でも想定内の中でできることはたくさんあります。実戦を想定して、数多くの問題にあたり、備えるからです。想定の枠を超えた想定外の時に、どう対応できるか、そういう力が実戦では必要になります。
講習会や合宿は、いわば想定外の訓練になるでしょうか?想定以上の勉強量。想定以上の問題レベル。想定以上の緊張。そういう中で出てくる想定外の自分。
この夏、講習会や合宿や模試で、想定外の経験を積み、大いに成長したみなさんに会えることを楽しみしています。