170321人間は自立して生きていかなければならない。しかし、自分ひとりでは生きられない。今日は、そんな矛盾を含んだ人生の一面を少し垣間見るお話をしていきたいとおもっています。

ある、中学1年の男の子がいました。その子は反抗期まっさかり、変なプライドがでてきて物事を正しく見ようとはしません。

ある日、この男の子はお父さんが買った小さなおんぼろのヨットで静岡県の西部を流れる天竜川の船着場から遠州灘に向けて帆走を楽しんでいました。この子のお父さんは、子どもが救命具もつけず、Tシャツと海水パンツでヨットのへりに腰掛けている姿に不安を覚え、子どもに声をかけます。「お~い、救命具ぐらいつけろよ!」しかし、この男の子は「大丈夫だよ、もう十分泳げる年齢だよ。」といって、お父さんの気持ちをさえぎってしまいます。しかし、その後突風がきて、その小さなヨットはひっくり返ってしまったのです。

男の子のお父さんはヨットに捕まっていたので、ヨットから流されずにすんだのですが、男の子は予想していない出来事だったため、海の中に投げ出されてしまったのです。遠州灘の潮の流れは速く、男の子はヨットからどんどん離れていきます。男の子はあせりました。ヨットに向かって懸命に泳ぐのですが、ヨットとの距離はどんどん離れていきます。Tシャツが肌に張り付いてうまく泳ぐこともできません。男の子はどんどん不安に襲われていきます。そして、ついに声を振り絞って・・・「助けて~、助けてくれ~」と泳ぎながら声をあげました。

この声を聞いてお父さんもあせりました。ひっくり返ったヨットから離れて、子どもに向かって一目散に泳ぎだしたのです。お父さんの泳ぐスピードは早くあっというまに男の子のところまで泳ぎつきました。男の子は安心し、お父さんに抱きつきました。そのときです。男の子に抱きつかれたお父さんは泳ぐことができなくなり、男の子ともども海の中に沈んでいきました。そのまま・・・2m~3mとどんどん沈んでいきます。男の子は安心して目をパッチリ開けていたため、自分とお父さんが海に沈んでいく様子、そしてお父さんが苦しそうにしている様子がはっきりわかりました。そしてこのままだったら二人とも確実に死ぬということをはっきりと理解しました。

男の子はお父さんから離れ、自力で海面まで泳ぎ顔を出しました。そして、潮に流されながらでもなんとか口だけは出していようと決心しました。体も疲れ果てました。海水も何度も飲みました。それでも口だけは海面からだしていよう、いや出さなければ死ぬと思い懸命に口だけを海面から出し続けました。

それからどのくらいのときがたったのでしょう・・・男の子はよく覚えていません。気がつくと目の前に小さな釣り船があり、その釣り船から人の手がでてきて、男の子を船の上にひっぱり上げてくれました。しばらくして、男の子が横を向くと、男の子のお父さんも船の上でひっくり返って寝ていました。男の子は助かったと心の底から思いました。

男の子はなぜ助かったのでしょう・・・
もし、男の子がもしお父さんにそのまましがみついていたら・・・
人は、自分で生きなければと思うと、勇気がでるものなんですよね!

ちなみに、この男の子は中学1年の時の先生です!