指導していく中で、毎年毎年、忘れられない生徒がいる。

今回はその中の一人の生徒の話をしようと思う。

その生徒は小学生からずっと来ている男の子の生徒で能開の予習も確実に苦にせずやり遂げ、能開の毎回の成績でも全国で上位をとる。学校の成績はそれほどこだわりがないのか5位以内をうろうろ。いつも早く来ては「算数クイズ」なる本を出し、読んでいて、「先生、これ解ける?」と質問してくるような生徒だった。

中学2年生になり、「中学練成合宿」に参加した。最後の「ファイナルテスト」でTOP高の合格ラインが450点で設定してあった。彼のとった得点は「449点」。しかし、5科目でそれだけとった生徒は他にはいなくて、彼がTOP。コメントを求められた彼は「この1点を来年に取り返します。」と語った。

中学3年生になり、「高校受験合宿」に参加。模擬入試でTOP高にTOP合格を果たし、昨年の雪辱を晴らした。

高校受験を迎え、彼は私立の有名高校2校を受験する。1校は合格。もう1校は特待生で合格する。しかし、彼がとった道は有名私立高校ではなく、その地区の公立TOP高だった。

彼に聞いたところ、「だって遠いし、その高校で高校生クイズに出たいんだ」と無邪気に言った。

余談だが、彼は高校2年生のときに本当に高校生クイズに出場し、能開のTシャツを着て、優勝する快挙を成し遂げる。

その高校2年生のとき、彼は少し元気がないように見えた。しかし、理由はあまり言わなかった。
高校3年生になり、彼は京都大学に合格した。そのあと報告に来てくれた彼は財布からあるものを出し、見せてくれた。

それは「有名私立高校の受験票」だった。「何でそれをまだ持っているんだ」と聞いたところ、彼はこう言った。

「これは僕への戒めです」

この言葉を聞いて、彼が3年間ずっと持ち続けた思いや背負っていた重圧を感じた。

高校部の先生や周りの友達から得た情報では同級生に「何で有名私立高校に行かなかったんだ」と結構言われていたらしい。

そして、中学2年生から中学3年生で持ち続けた思い、高校1年生から高校3年生まで持ち続けていた思いの強さを感じた。
改めて「すごいな」と尊敬に近い感情を持った。

「思いを持ち続けること」

そんな容易いことではない。

でも、皆さんはその時その時に感じた「感情」を無駄にしていないですか?その悔しさを、喜びをすぐに忘れていないですか?

「自分の思い」を大切にすること、持ち続けることで未来が変わることもあるんだ。