140901皆さんは音楽が好きですか?
先生はクラシック音楽がとても大好きです。

「クラシック」といえば、非常に堅苦しくて、聞いていて眠くなる…を思う人がいるかもしれません。
しかし、よく考えてみてください。「クラシック」と呼ばれる音楽が作られた当時にしてみれば、私たちが考える「流行歌」と大して変わらない位置づけだったんですよ。
だから、「クラシック」と呼ばれる音楽は、当時の流行やメッセージがふんだんに盛り込まれているんです。その中の一つを紹介しようと思います。

先生のお気に入りの曲の一つに「序曲1812年」という曲があります。作曲者はピョートル・チャイコフスキー。「くるみ割り人形」などを作った人として非常に有名です。
しかしこの曲は、クラシック音楽の中でも非常に珍しいことですが、通常楽器としては扱われないものを楽器として使われていることで知られています。
何だと思いますか?それは「大砲」です。なんで?と思うかもしれませんが、実はその理由はタイトルからもわかります。

1812年という年は、フランス史上最大の英雄であるナポレオンがロシア遠征を行って、大損害を出して撤退する年です。ロシアでは、今でもロシア遠征を「祖国戦争」と呼び、誇りに思っています。
この年は、ヨーロッパ史においても非常に重要な年です。当時無敵だと思われていたナポレオン率いるフランス軍がロシア軍に大敗したという事実は、ナポレオンのことを快く思っていないヨーロッパ各国に勇気付けることになり、後のナポレオンの滅亡へと繋がっていくきっかけとなったからです。

さて、「序曲1812年」は、フランス軍がロシアに攻めてくる様子や、ロシア軍がフランス軍をやっつける光景を表現しています。その最大の盛り上がりを見せる部分で「大砲」の出番がやってきます。「大砲」を用いることで、ロシア軍がフランス軍をやっつけたことを強調しているわけです。

チャイコフスキーはこの曲の作曲をとても嫌がりました。彼は友達への手紙の中にも、「この作品を愛情もって作ってはいない」といっているくらいです。それでも、彼は短期間でこの曲を完成させて発表しています。するとロシア国内で大反響を巻き起こし、世に知られる曲となりました。ただし、この曲はフランス国内ではほとんど演奏されることはありません。だって「フランスが負けた」ことを表現している曲なのですから。

先生が君たちに伝えたいことは、「芸術作品」として世に残っているものには、それぞれの背景があり、作曲者の思いや意志が込められているということです。

「読み取る」ということは、単に「国語の問題で正確に答えを出す」というだけではありません。なぜそういう結論に至ったのかということを掘り下げて考えることこそ、真の「読み取り」なのです。
皆さんにはいろんな本に接して欲しいと思います。いろんな情報に接して欲しいと思います。その中で、いろんなことがわかってきます。ぜひいろんなものに接してください。いろんなことを体験してみてください。

皆さんには、多様なものの考え方やものの見方を持って欲しい、そう先生は願っています。