180625この間新学期が始まったと思ったら、もう6月も終わります。1学期は学校でも能開でも、まだ習ったことないことに向かったり、今までしたことのないほどのたくさんの課題を出されたり、大変な思いをしながら勉強に向かっている人も多いでしょう。そして苦しい中で、こんな疑問が浮かんでくることがあるかもしれません。

「どうして勉強しなきゃいけないの?」

そんなみなさんに、この春出版された「答えのない道徳の問題 どう解く?」という小学生向けの本を紹介します。
「食べていい動物と食べちゃいけない動物の違いってなんだろう?」
「どうして正義のヒーローは、悪者を殴っていいんだろう?」
「ネット上の友だちと学校の友だち、どっちが本当の友だちって言えるんだろう?」
など、大人でも考えこんでしまうような問題が出されています。それに対してジャーナリストの池上彰さん、詩人の谷川俊太郎さん、卓球の水谷隼選手など著名人が答えてくれています。その中にこんな質問があります。

「どうしてお母さんはボクの嫌いな勉強をおしつけてくるんだろう?」

それに対して、将棋棋士の羽生善治さんが回答しています。
__この世界にはたくさんのものがあります。目に見えるもの、見えないもの、手にふれられるもの、ふれられないもの、その一つひとつを知ってゆくのが勉強で、外で遊ぶのも勉強です。 ~(中略)~ たくさん勉強して、たくさん遊んでできるだけたくさんのことを知ってください。そして大人になったときにいらないものを自分の判断で捨て、残ったものがあなたが勉強したものです。

この本は答えを出すことが目的ではなく、この本をきっかけに子どもたちが深く考えるためのきっかけとなるようにつくられたものです。羽生さんの答えもひとつの答えであると思いながら、先生も考えてみました。
先生自身、小学生・中学生のときにほとんど勉強しない子どもでした。誰よりも勉強していなかった自信があります。特に算数・数学は嫌いで、因数分解や平方根なんていつ使うんだ?分数・小数の計算なんか電卓でできるじゃないか、なんて思っていました。
そんなことで高校入試がうまくいくはずもなく、第一志望の高校にはいけませんでした。でも、どうしても大学にいって英語が勉強したい、第一志望の高校にいった中学の同級生よりも勉強してやろうと思い、振り返ってみると大学入試のときが人生で一番勉強したという自信があります。そして大人になって難しい課題を出されても、受験勉強のことを思い出すと、何でもできそうに思います。あのころがんばった自分が今の自分を支えてくれていると思っています。
大人は「勉強しておけばよかった」という思いか、「勉強しておいてよかった」という思いのどちらかを、誰しも持っています。あのとき勉強しておかなければよかったと思うことはありません。
勉強を続けることは大変です。時に悩んだり、迷ったり、投げ出しそうになったりします。でもそれは皆さんががんばっている証です。

勉強をする意味や価値はあるのか。その答えは勉強をしていく中で一人ひとりが見つけることができます。苦しくても前進していけば、答えは見つかります。しなければ見つかりません。

180618みなさんの中には「覚えるのが苦手」という人が結構いるかもしれません。
算数や数学の公式、漢字・ことわざ、理科の語句、社会の歴史の年表などなど。
中学生が、定期テスト前にひたすら学校のワークを繰り返し解きまくっていて、「時間が足りない」ということを聞きます。

元来、記憶のメカニズムで言うと「興味を持つモノ」に対して記憶の定着率は
話を聞く5%
本を読む10%
実際のモノを見る20%
ノートを取る30%
討論する50%
実際にやってみる75%
人に教える90%
と、確かにただ単に見たり聞いたりするだけより、「実際にやってみる」からが飛躍的に数字が上がっています。

しかし本当に何回も何回も解かないと覚えられないのでしょうか。
よく「あいつは生まれつき記憶力が高いから1回見たら覚えられる」という人がいますが、ただ単に覚えることだけをしていると、いずれ記憶の器もパンパンになって、最終的には以前のように簡単に覚えられなくなります。この先たくさんの覚えることが待ち受けているのですから、できるだけ丸暗記する際の「脳のメモリー」は空けておけるように工夫して覚えるべきです。

ではどのようにして工夫するのか。
人によって様々でしょうが、先生がおススメするのは
【理解して覚える】【こじつけて覚える】です。
全く別物のように思えますが、【理解して覚える】のであれば、記憶する部分とは別に思考する部分が動きます。そうするとより深く記憶回路に残ります。
これに対し【こじつけて覚える】のは、どうしても理解ができないモノでも何とか覚えようとして思考するから、最終的には頭に残りやすいです。
例えば北方領土は本土に近い方から「歯舞⇒色丹⇒国後⇒択捉」の頭文字を並べて「はし(デ)くえ」となります。「箸で食え」と覚えればガッツリ残りますね。何も考えない丸暗記とは大違いですね。

覚えたいことをスキマの時間を利用して日々何回も繰り返すとさらに有効的です。トイレの前に貼ってみるのもいいですね。

能開の勉強と学校のテスト勉強・宿題などが重なっていて苦労している人も多いかもしれません。
学習総量の確保は大前提ですが、ちょっとした工夫で脳のメモリーに空きを作ることはできます。
工夫をするというのはボーっとする時間をなくすことに直結です。つまりは集中力がアップするということです。

今年の夏は工夫をして脳を鍛え、合宿・講習会を愉しみましょう。

180611現在、シアトル・マリナーズ会長付特別補佐になっているイチロー選手が、自身が大会会長を勤める少年野球大会の閉会式に出席した際、少年たちにメッセージとして『自分は人の2倍も3倍も、頑張っているということは全くありません。「人と比較」するのではなく、自分が限界だと感じた時に、あと少しだけ頑張るということを続けてきたから、今の自分があります。自分の中で、ちょっとだけ頑張るということを続けていくと、将来、思ってもいなかった自分になっていると思います。』と語っています。

イチロー選手というと「野球の天才」でありながら、人の2倍も3倍も努力する「努力家」というイメージがありますが、『人の2倍も3倍も、継続して頑張ることなんてできない。』と断言しています。イチロー選手はさらりと言っていますが、「自分の限界より、あと少しだけ頑張る」ということは、トップアスリートだからできるのであって、並大抵のことではできません。いきなりそう言われたら、多くの人が『そんなの無理!』と思うはずです。抵抗なく受け止められるのは、自分の能力にかなりの自信がある人でしょう。しかし、ハードルを下げて、「今の自分より、少しだけ頑張って、それを毎日続けていく」ことならやろうと思えば、誰にでもできるのではないでしょうか。これは野球などのスポーツのみならず、勉強についても言えるのではないでしょうか。

では、「少しだけ頑張って、それを継続していく」とどうなると思いますか。又、「少しだけサボった場合」どうなると思いますか。今の自分の力を100とします。『10%アップぐらいならできます。』という人がいるかもしれませんが、少しだけということで、あえて5%アップを目指して頑張ることとします。毎日、たかが5%のアップと思われるかもしれせんが、例えば、これを夏休みが始まる日から40日間続けていくと、100×1.05×1.05×……(1.05を40回かける)≒704と最初の自分の力より約7倍もレベルアップしたことになります。少しの努力を毎日継続しただけで、7倍もレベルアップできるなんて凄過ぎると思いませんか。そんな自分を想像してみてください。ワクワクしてきませんか。まさに「継続は力なり」です。一方、少しサボって5%ダウンの95で夏休みの40日間を過ごしたとすると、100×0.95×0.95×……で同様に計算すると≒13と始めの自分の力の1/7以下となります。頑張った1.05倍とサボった0.95のわずか0.1の差が40日間も続くと704÷13≒54倍というとんでもない差となっていきます。

あと1ヶ月もすれば、長い夏休みに入ります。夏休みは、能開の教育行事として講習会、合宿、8月ゼミなどがありますが、学校での授業がないため、部活が忙しい人でも、自由な時間はたくさんあります。この自由な時間を、今までより少しだけ頑張って、それを継続していきましょう。その頑張りを継続することが、自分の成長に繋がるはずです。

1806046月に入りました。
先生の家の前には田んぼがあります。その田んぼで先日「田植え」が行われていました。
今は小さな苗が等間隔に並んでいます。これがどんどん伸びて、秋には稲穂となり、お米が収穫されますね。先生はこの家の前の田んぼを見て季節を感じます。

ところでこの「田んぼ」。
ちょっと前までは蓮華草が一面に咲き、それで春の訪れを感じさせてくれていました。この「蓮華草」ですが、勝手に咲いているものではなく、農家の方がわざわざ種をまいているんです。何のためか。それはこの蓮華草自体が肥料になるからです。
蓮華草には根っこのところどころに「根粒」というこぶがあり、このこぶの中に「根粒菌」という細菌がいます。根粒菌には、空気中の窒素を植物の成長に必要な養分に変える能力があり、蓮華草自体、根粒菌から養分をもらっています。つまり、蓮華草自身が、窒素をたくさん蓄えた肥料みたいなものなのです。
それを機械で土の中に混ぜ込むことで、土の中の肥料分が多くなるんです。
こうやってたくさんの肥料を蓄えた土に水が張られ、今のように苗が植えられていきます。
ここから先はどうなるかというと…
苗は水と養分をたくさん吸収しながら大きくなっていくのですが、その途中では「中干し」といって、地面にひびが入るくらいに水を抜く期間があります。
目的は色々ある(去年の切り株の残りが腐って発酵して出るガスを抜く・余分な分けつ(茎が分かれる)のを防ぐ・土の割れ目から新鮮な空気を入れる など)そうなのですが、その一つに『稲に水を与えないことによって稲にしっかりと根を張らせる』という目的もあるそうです。稲にとっては水がなくなるのは厳しい環境のようにも見えますが、そういう環境だからこそ根がしっかりとはられ、丈夫で倒れにくい稲になり、そこに付く稲穂も良いものが出来るそうです。

皆さんの勉強も同じではないでしょうか。
学力という稲穂を大きく実らせるためには、たっぷりと養分(知識)をたくわえていく必要があります。ただ、それだけで学力が向上するわけではありません。たくわえた知識を使う場面や、それを試される場面、また今もっている知識をつなぎ合わせて、初めて見る問題に活用していく場面を乗り越えていく必要がありますし、なによりそういった場面を乗り越える強い気持ちを身につけることは、一筋縄ではいかないかもしれません。ときには「中干し」のように厳しく感じることもあるでしょう。
ただ、そういった厳しさを乗り越えるからこそ、夏以降には大きな収穫が待っているはずです。
今目の前に勉強に苦戦している人も、乗り越えようと思って挑戦している人は、きっと乗り越えられます。秋の収穫を目指して、がんばりましょう。