「人間は考える葦である」とは、フランスの有名な哲学者・パスカルの言葉です。葦というのは水辺に育つ、弱く細い草のような植物のことで、パスカルは著書の中で「人間は自然の中では葦のように弱い存在である。しかし、人間は頭を使って考えることができる。考える事こそ人間に与えられた偉大な力である」ということを述べています。

学習をしていると、わからない問題に直面することが多々あると思います。そんなとき皆さんはどうしますか?

「解答解説を読む」「もう一度考え直す」「先生に質問する」「あきらめる」。いろいろな選択肢がありますが、どれが正解というわけではありません。しかし、わからないことが出てきたら「何でもかんでもすぐ質問して解決する」というのも考え物です。確かに質問によって疑問が短時間で解決でき、そのぶん練習をたくさんすることができるようになるというメリットがあります。と同時に、自分ではそれほど頭を使わないため、「自ら考えて解決方法を見つける」ということをしなくなる危険性があるのです。

今の世の中にはAI(人工知能)を搭載したロボットが登場し、いろいろな状況をAIが自ら判断して動くことができるようになってきています。しかし昔のロボットは今のものとは違い、人間によって与えられた命令しかこなすことができなかったのです。考えることをしない人は、他人の命令によってしか動かないロボットのような人、つまり「ロボット人間」ということになるでしょうか。何も考えずに他人や機械の言いなりになれば、もはやそこに「自分」は存在しません。脳みそ(=思考)が無くても動くことができるので、そういう人はもはや自分ではなく「他人」なのです。もし人類の大半がロボット人間になってしまえば、「考えるAI」によって「ロボット人間」が支配される世の中になってしまうかもしれませんよ?

パスカルが言うように、人間は自ら「考える」ことができます。せっかく与えられたその力を無駄にせず、まず自分の頭で考えてみるようにしてください。もちろん、自分の考えた答が正しいかどうかもわかりませんし、思考には時間も労力もかかります。でも、自ら考えて出した答こそが「自分そのもの」なのですから、自分が自分らしくあるためにも「考える」ことを大切にしてほしいと思います。