なかなか新型コロナウィルスの脅威が収まりきらない中、夏休みに突入し「どこかに行きたいな」と思う人も多いのではないでしょうか。早くいろいろな心配をせずに、気軽に旅行でも楽しめるようになってほしいと心から思う今日この頃です。

旅行といえば電車!ということで、今日は「電車のドア」についてお話しします。日常生活と電車という空間をつなぐドア。実はそのドアにはものすごくたくさんの技術が詰め込まれています。例えば新幹線のドア。厚さは約3.5㎝ほどだそうです。その厚さで、時には1トンを超える風圧(時速300㎞の車両同士のすれ違い)に耐えられるように設計されているとか。

では、それだけの力に耐えられるように使われている素材はというと…実は「アルミ」と「紙」なのです。確かに強い力にも抵抗できるようにしようと思えば、ほかにも有効は素材があるかもしれませんが、強いだけでなく「軽い」ことも重要なのです。そういう意味では、アルミは軽く加工しやすいので、新幹線の側面の曲面にも合わせやすいという利点があります。

ただ「加工しやすい」というのは「変形しやすい」ということなので、当然新幹線の走行時の風圧には耐えられません。そこで登場するのが「紙」です。紙と聞いて「大丈夫?」と感じる人もいるかもしれませんが、「ハニカム構造」というものを知っていますか?正六角形および正六角形柱が隙間なく並んだ構造のことで、紙で作れば軽いにも関わらず高い強度を誇るそうです。

ただし、これらの素材のお互いの特性を相乗的に発揮させるためには、2つの素材がピッタリとくっついていなければなりません。ただ、普通の接着方法では「金属の板にハニカム構造、つまり薄い紙を縦に接着すること」は困難です。しかし、ある会社がすでにその技術を実現させていたのです。

その会社は、「電車のドア」を作成している会社で、最初は「アルミ」と「ハニカム構造の紙」が接着できずに困っていたそうです。そういった接着剤が無いのです。そこでこの会社がとった方法は「接着剤を作る」でした。金属を専門に扱う会社が「接着剤の開発」を始めたのです。そしてそれを完成させました!

ただ、さらなる問題が…その接着剤を「上手に素早く塗る方法が無い」ということ。特殊な接着剤で粘着力が高いために、通常の「へら」ではムラができすぎて、どうにもうまくいかない…ということで、今度は「へらの開発」に取り掛かります。すごいですね。

そして、ついにへらも完成しました!この2つの開発が、現在の新幹線のドアにも受け継がれているそうです。ちなみに、今現在もこの会社の作る「新幹線のドア」は高いシェア率を誇り、その接着剤を塗る作業は「試験を合格した職人による手作業」らしいです。もしこの会社の人たちが「無い」=「無理」と思ってやめてしまえば、この技術は誕生しませんでした。

どうですか。皆さんの身の回りでも「無理だ」「できない」と思ってしまう状況は、勉強やスポーツ、日常の生活の中に突然出てくることはありませんか。でも「無理」「できない」は、そこで道が終わっているのではありません。「壁」があるかもしれませんが、実はその壁は壊したり飛び越えたり、あるいはよじ登れたりするもので、先に道が続いているかもしれません。

大切なのはチャレンジしてみること。そして、それを乗り越えた自分にワクワクすることです。きっとこの会社の人たちも「この技術がうまくいけば・・・」とワクワクしながら開発していたのではないかと思います。この夏が終わった後の自分を想像して、みなさんも目の前のことに積極的にチャレンジしてくれることを願っています!