お寺には仏像があります。
当たり前と言えば当たり前のことです。
教科書に写真が載っていたり。
旅行の際に大して興味もないのに、親に半ば強制的に連れていかれたお寺に行けば仏像が安置されていて、子供が楽しめるようなアトラクションなどあるわけもなく、特に信心深いわけでもないが、とりあえず世界平和を祈ってみたり…。
まあ、皆さん同じような思いをした人もいると思います。

学生のころ、とある授業の一環で、博物館での実習をしたことがありました。
小さな博物館でもあり、他に実習生がいなかったため、博物館の館員さん(学芸員)のお手伝いをさせてもらえることになりました。
そこは歴史資料館でした。
今から1500年前の仏像の展示を行っていました。
とはいえ、そこまで詳しい知識があるわけでもないため、見学しながら荷物運びや掃除をしていました。

実習も終わりに近いある日、展示の終わった展示品の仏像を所有者であるお寺に返さなければなりませんでした。
ところが、運が良かったともいうべきか、交通渋滞に巻き込まれて一人の館員さんが間に合わないことになり、急遽お寺まで同行し、仏像の運搬をさせてもらえることになったのです。
すでに車には載せてあり、あとはお寺で実際に運んで元の場所に戻す、という単純な作業ではありましたが、人手がいるということで手伝わせてもらうことになりました。

お寺に着いて早速仏像を荷台から降ろし、4~5人で抱えて運んでいきます。
とても重たかったけれど落としてしまうわけにはいかないので汗だくになりながら運んでいきました。
仏像はとっても古く、黒ずんでいたり、修繕のあとがところどころにあり、思っていた以上にボロボロでした。
でもちゃんと磨かれており、テカテカしていたのを覚えています。
仏像にはよく見ると背中に穴が開いています。
聞けばそこには仏像を造った人がお経などのいろいろなものを入れて、それに対してお祈りしていたのだそうです。
「ああ、今この手に持っている仏像には数百年もの人々の思いがこめられてきたんだな。
」そう思うと、数百年という時間に自分も加われた気がして思わずうるっとなってしまいました。
言葉では上手く言い表せませんが、とても感動したのを覚えています。

学びには、必ず感動があるものです。
すでにその感動を味わったことがあるぞ、という人もいれば、まだこれからかな、という人もいるでしょう。
とても良いですよ。
いつそんな時が訪れても良いように、学びの姿勢をちゃんと保つこと、そして、少しだけでも良いから深く学ぶことを忘れないようにしましょう。