昨年の春、幼稚園の先生をしていた友人と会った時のことです。彼女のカバンの中からチラシがのぞいているのが見えました。「何持ってるの?」とたずねると、にこにこしながら見せてくれたのは、某予備校の生徒募集のチラシでした。チラシには『〇〇大学 法学部合格! □□君』の文字とともに、満面の笑顔で学生服の男の子が載っています。この男の子が幼稚園の時、友人が担任をしていたのだそうです。朝、新聞の折り込みに入っていたものを何となく見ていたら、名前で気がつき、行きがけの電車の中でじっくり見ようと思ってチラシを持って出てきたとのこと。

「小さいころの面影が残ってるわ~。法学部ってことは法律の勉強するんだね。同じばら組さんの子たちもみんな高校卒業だよね。みんな元気かなぁ」と、ひとしきり当時の思い出話を聞かせてくれました。

 さて、皆さんは今までに『先生』と呼んだ人が何人いるでしょうか。数えてみたことがありますか? 保育園や幼稚園、小学校、中学校の先生、塾や合宿、習い事、自然学校やスポーツ教室の先生、たくさんの先生たちがいることと思います。その中でも『忘れられない先生』『大好きな先生』普段は忘れてしまっているけれど、ふと思い出して「もう一度会いたいな」と思う。そんな先生はいませんか?

先生たちの方も同じです。毎年たくさんの生徒に出会い、別れていきますがその中でも、忘れられない生徒や思い出に残る生徒たちが存在します。普段は目の前の生徒たちのことで一生懸命でも、ふとしたきっかけで昔の生徒を思い出すと、あの子のクラスであんなことがあったな、こんな子もいたな、と生徒たちと過ごした時間がどんどん蘇ってくるそうです。そして様々な思い出をたどりながら、生徒たちが健やかで幸せでいることを願うのです。

「先生ってそういうイキモノなの。勉強教えるだけじゃないの。だから先生なのよ」

春の日差しの中、そういうイキモノの友人は、かつての教え子の成長と門出を心から祝福していました。

公立高校の入試が始まっています。皆さんの今までの成長にかかわってきた、全ての『先生』たちは、かつての生徒たちが全力で試験に臨めるよう、良い結果につながるように強く願っています。祈・合格。持てる力の全てを出し切れ。