夏休みが近づいてきましたね。

 私の学生時代は、残念ながら毎日毎日一生懸命に勉強してきたわけではありません。だから毎週教室に来るみんなの顔を見たり、他の先生たちからみんなの話を聞いたりして「能開の生徒たちはすごいな」といつも思っています。
 
 優等生ではなくても、大学を卒業するためには卒業論文を書かなくてはいけませんでした。書くにあたって、まずはテーマを何にしようかと考えました。別のゼミにいた友だちに話を聞くと、すでにテーマがいくつか決まっていてその中から選ぶという、うらやましいゼミもありました。(しかしそのゼミは普段はとっても厳しいところでした。)
 しかし、私が所属していたゼミの先生はそんな親切なことはしてくれません。それまで先生の部屋に一人でたずねていくと、“これから社会に出て生きるとは”という説教を必ずされましたからね。どれだけ手のかかる学生だったかが、わかるでしょう。ギリギリまで悩んだ挙句に持っていったテーマは、「学生の逸脱行動」について調べるものでした。当時は、大学に置いてある傘や自転車をとっていく(無断で借りていく)ということが日常的に起こっていたからです。なぜそんなことをするのだろう?

 先生にテーマを伝える時は、ドキドキしました。友だちに協力してもらい、なるべくたくさんの人のアンケートをとって調査することは決めていましたが、それからどうすればよいかわからなかったことや、テーマそのものを認めてもらえないのではないかと思ったからです。しかし先生はテーマを選んだ理由を聞いて言ってくれました。「そう。身近なことから問題意識が出てくるものよ。」と。ほめられたわけではありませんが、とてもうれしかったことは覚えています。
 そこからは、かなり時間がかかりました。アンケートを友だちや後輩やアルバイト仲間に依頼をかけ、できるだけ多く回収して、集計して、コンピューターに打ち込んで、ということを一人でやらなければいけないので、当然時間はかかります。でもとても楽しかった。自分が今やっていることは、与えられた勉強ではなくて、「自分で」調べて、その結果をもとに「自分で」なぜこうなるのかを頭をひねって考えて言葉にすること。苦しい時間でしたが、同時にわくわくするような愉しい時間でもありました。

 卒業論文に近いのは、みんなにとっては「自由研究」でしょうか。講習会の宿題でわからないところを調べるのもそうですね。今度の夏期講習では、自分が“なぜ”と思ったことやわからないことを調べる愉しさ(たのしさ)をぜひ体験してもらいたいと思います。たとえそれがテストの問題には出なくても、その愉しさをきっとずっと覚えているでしょう。